研究概要 |
リポ酸はグリシン開裂酵素系のH蛋白及びピルビン酸,α-ケトグルタル酸および分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体のE2成分に補酵素として結合している.リポ酸はリポ酸活性化酵素によってlipoyl-AMPとなり,ついでリポ酸転移酵素によってリポイル部分が蛋白に転移される.本研究課題で以下の成果を得た. 1) ウシのリポ酸転移酵素をクローニングして,塩基配列を決定した.塩基配列から推定されるアミノ酸配列は大腸菌のリポ酸-蛋白リガーゼと35%の相同性を示した.大腸菌中で発現させたリポ酸転移酵素から作成した抗体との反応性,cDNAの塩基配列およびRT-PCRの結果より,ウシ肝臓のリポ酸転移酵素のI型,II型は同一遺伝子の転写・翻訳産物でありミトコンドリアでのプロセッシングの違いによって生じたものであることを明らかにした. 2) 精製したリポ酸転移酵素はselenolipoyl-AMPに対しても親和性を持ち,セレノリポイル基をアポH蛋白に転移した.セレノリポイル化されたH蛋白を用いてS-SとSe-Seとの酸化還元電位の相違に基づいてグリシン開裂反応を考察した. 3) ヒトのリポ酸転移酵素の遺伝子をクローニングしてその遺伝子がヒト第2染色体ql1.2に位置することを明らかにした.種々組織におけるリポ酸転移酵素の発現はリポ酸の受容体蛋白の発現とよく相関しており,組織における効率の良いリポイル化が示唆された. 4) ウシ肝臓ミトコンドリアよりリポ酸活性化酵素を部分精製した.感度の良い酵素のアッセイ方法の確立および酵素の精製については現在続行中である.
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