研究概要 |
レチノイン酸は、形態形成、細胞分化誘導、神経系形成並びに肢芽形成等リポアクチベターとして必須の化学物質です。このレチノイン酸を生合成する酵素系を我々は研究してきました。 これまでの研究で、レチノイン酸合成酵素には、ミクロソーム局在のシトクロムP-4501A1(CYP1A1)モノオキシゲナーゼ系、細胞質にレチナール酸化酵素及びNADP^+-依存性脱水素酵素の3種類が少なくとも存在します。平成10年度は、これらの全塩基配列を決定しました。これにより、全アミノ酸残基の配列も決定しました。その結果、レチナール酸化酵素(EC1,2,3,11)とアルデヒド酸化酵素(EC1,2,3,1)は同一の酵素であることを証明しました。ウサギ肝臓のレチナール酸化酵素とマウス肝臓のレチナール酸化酵素のアミノ酸配列の相同性についても検討しました。その結果、相同性は高く、82%でした。レチナール酸化酵素は、分子量30万で、2量体の分子構造を持ち、MoとFeをキレートしたFADを補酵素とするフラビン酵素です。このような高分子で、しかも2種類の金属を持つ酵素の大腸菌中での発現はこれまでありませんでしたが、我々は、ウサギのレチナール酸化酵素を大腸菌で発現することに成功しました。レチノイン酸生合成酵素の1つであるNADP^+-依存性レチナール脱水素酵素の塩基配列も決定し、この大腸菌での発現並びに酵素活性や酵素化学的性質を検討中です。各種レチノイン酸合成酵素の動物の発達段階での発現状態についても検討中です。
|