研究概要 |
自己免疫疾の発症にはT細胞サブセットのバランスが重要であるということが明らかにされつつある.その一方で,Maf群転写因子の一つc-Mafが,IL-4遺伝子の活性化を通じてT細胞サブセットをTh2細胞の誘導しているという報告がなされた.そこで,c-MafおよびMaf関連遺伝子(MafKなと)を利用してTh1/Th2の比を変化させ,自己免疫病モデルマウスの治療実験を行い,以下のような結果を得た. 1) c-MafをT細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスの作成. CD2,あるいはLCKの制御領域を利用して,c-MafをT細胞特異的に発現させるための構築を作成し,マウス受精卵に導入して,トランスジェニックマウスを作成した.このマウスにおいて,T細胞サブセットがTh2優位になっていることを示唆する血清学的な解析結果が得られている.また,このマウスは,8-10ヶ月以上の加齢によりリンパ腫を好発することも明らかになった.一方,転写活性化領域を欠失するMaf群転写因子であるMafKをc-Mafに対するドミナントネガティヴな分子として利用し,マウス個体においてc-Mafと同様にT細胞特異的に過剰発現させたところ,このマウスにおいてはT細胞の分化が抑制されるという結果が得られた.今後は,これらのトランスジーンを自己免疫疾患自然発症マウスへ導入して,疾患感受性の変化が起こりえるかを検討する. 2) マウスにおけるc-maf遺伝子破壊実験. ジーンターゲッティングの手法を用いて,マウスにおけるc-maf遺伝子の破壊を行った.c-Maf欠損マウスは,多くが胎生後期で致死であり,レンズの形成異常を示した.T細胞の異常について今後解析を行う予定である.
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