研究概要 |
血小板の血管壁損傷部位への接着および凝集塊の形成は止血血栓の課程に重要であり、血小板表面のインテグリンが重要な役割を担っている。最近、Gqαの遺伝子欠損マウスの血小板では、すべてのアゴニストによる凝集が抑制されることが明らかにされ、Gqαを介するシグナル伝達経路の解明が重要である。また、Gqα欠損血小板では、shape changeには変化が見られず、GiあるいはG12/G13の関与が示唆された。shape changeは細胞骨格の変化を伴い、関連するシグナリングについて検討した。 血小板をトロンビン刺激すると、凝集に伴い細胞骨格の再構築を生じ、多くのシグナル分子(Src,PKC,PLC,Gi,Gqなど)が細胞骨格に移行することを、各種抗体を用いたウエスタンブロッティングにより示した。血小板には数種のPLCアイソフォームが存在し、主なものとしてはβ2,β3,γ1,γ2があり、他に少量のβ1,δ1,β4が検出された。PLCβ3にはa(155kDa)とb(140kDa)が膜とサイトゾル画分にそれぞれ存在し、トロンビン刺激によりインテグリン依存的に再構築された細胞骨格に移行する。また、PLCβ3(a,b)は細胞骨格に移行後、カルパインにより限定分解をうけ100kDaになり、G蛋白質βγサブユニットにより活性が増強され、凝集に関係した後期のDG産生に関与していることが示唆された。血小板のGiとGqは同じβ1γ5であることを抗体を用いて明らかにした。以上の結果から血小板凝集には、アゴニスト刺激によるGqαを介するPLCβ2/3アイソフォームの活性化とインテグリンシグナルにおけるGiのβγによるPLCβ3の活性化の連係が重要であることが示唆された。
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