研究概要 |
細胞接着に与るセレクチンリガンド糖鎖として知られているシアリルルイス-X(sLeX)抗原は、ヒトプレB白血病細胞株をモデルとした遺伝子導入による人工的改変操作を用いて、コア2GlcNAc転移酵素遺伝子(C2GnT)によって発現レベルが調節されていることが判明している。それを受けて本研究では次のことを明らかにした。 1. sLeX抗原は、糖蛋白質ならばどの蛋白にも発現するのではなく、分子量150kDaの特定の糖蛋白(gp150)上に存在するO-グリコシド型の糖蛋白質性糖鎖末端にのみ発現し、gp150がE-セレクチンのカウンターリガンドとして機能していること。 2. ルシフェラーゼアッセイ,EMSA,RNA blottingによって本システムの律速酵素C2GnT発現の転写調節機構を解析し以下のことを明らかにした。 (1) 転写調節領域の三つのTATAボックスのうち、転写開始点に一番近い-182のTATAを含む部分欠失ミュータントが最も高いルシフェラーゼ活性を示した。 (2) C2GnT遺伝子発現細胞株は非発現細胞株の約十倍の一過性転写活性を示した。また細胞分化によりC2GnT遺伝子発現を抑制したところ、一過性転写活性が約十分の一に減少した。これらはC2GnT遺伝子のメッセージレベルの変化・C2GnT酵素活性・細胞表面sLeX抗原発現レベルの差または変化と極めてよく相関していた。 (3) GATA,NF-IL6,Splといった転写調節因子の結合領域が関与し、GATA3,NF-IL6,C/EBP_γY,Sp3,Sp4の発現レベルがC2GnT遺伝子発現レベルに呼応していた。
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