研究概要 |
類上皮血管内皮腫(epithelioid hemangioendothelioma,EHE)は、かつて肺のintravascular bronchiolar,and alveolar rumor(IVBAT,Liebow,1975)と呼ばれた特異な組織像の腫瘍で、肺以外に軟部組織(Enzinger,1982)、肝(Ishak,1984)、骨(Tsuneyoshi,1985)などにも発生し、低悪性度の腫瘍と考えられている。日本で最初のIVBATの報告は1980年(田口)になされ、肝臓のEHEは私共が1983年にその存在を指摘した。今回の調査では、肺原発20例、肝原発37例、その他の臓器(皮膚、大血管、多発)が4例であり、肺よりも肝臓に多い傾向であった。従来、女性に多いとされているが私共の調査では、肺については男女比9:11で差がなかったが、肝については男女比13:24で有意に女性に多く、臓器による性差が示された。診断時の平均年齢は肺(男36.4歳、女42.2歳)、肝(男45.8歳、女41.1歳)であり、男性では肺が肝に比べ約10歳若かった。臨床診断は肺も肝も転移性腫瘍とされることが多く、診断困難な疾患と推察された。EHEは長い経過を辿る低悪性度腫瘍とされるが、死亡率は肺47%、肝40%と高く、肺EHEのほうがやや予後不良であった。自験死亡例のうち肝原発の2例は組織学的悪性度は変化せず、肝全体に腫瘍が進展したための肝不全死であった。その他の死亡例は、初診時の組織像に比べ細胞密度、核異型性ともに明らかに増し、2例については多形性が著しく、高悪性度の肉腫の像であった。悪性化した例は増殖マーカーMib-1のラベル率の増加に加え、癌抑制遺伝子p53の異常発現なども観察された。すなわち、EHEは経過中に高悪性度の腫瘍にprogressすることがあり、必ずしも低悪性度腫瘍ではないと考えるべきものと思われた。
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