研究概要 |
びまん性肺疾患に対する開胸・胸腔鏡下生検を用いて以下のような検討を行った。 1, IPF急性増悪例6例の増悪時における開胸生検組織を病理組織学的に観察した結果、6例中5例には背景の慢性的変化としてのUIPがみられ、それに加えて新鮮な又は器質化期のDADが種々の程度にみられた。1例は剖検にてUIPが確認された。DADにはウイルス感染など明らかな原因を示す所見はなく、IPFの自然史としてDADがおこりうると考えられた。 2, IPFのうち病理学的に非特異性間質性肺炎(NSIP)を示す症例に膠原病にともなう同様の症例を加えて計17例につき臨床的病理的に検討した。病理学的にほぼ時相の均一な間質の線維化とリンパ球、形質細胞の浸潤がびまん性または斑状にみられ、しばしばリンパ濾胞をともなった。NSIPは病理学的に通常型間質性肺炎(UIP)、急性間質性肺炎(AIP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、閉塞性細気管支炎を伴う器質化肺炎(BOOP)のいずれとも異なるが、各々境界領域の症例も少なからずあった。今後、免疫異常の関与を重視してさらに厳密な定義付けをする必要がある。 3, IPFの開胸・胸腔鏡下生検例のうち、病理学的に確認されたUIP27例、AIP9例、DIPl例、BOOP5例に、上記NSIP17例を含めて、4種のmatrix metalloprotease(MMPl,2,3,9)と2種のtissue inhibitor of metalloprotease(TIMP1.2)の発現を、type-IV collagenの分布とともに酵素抗体法2重染色法にて検討した。MMPlはすべてのタイプの間質性肺炎において肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮、細気管支上皮に比較的強く発現した。MMP2と9はUIPとDIPにおいて他のタイプの間質性肺炎よりも強く発現した。MMP3はAIPとBOOPにおいて有意に発現した。TIMP1と2はすべてのタイプの間質性肺炎において主として線維芽細胞に強く発現した。 3, 2,と同じ症例でサイトカイン(TNFα,IL-1,IFNγ,IL-6)、増殖因子(PDGF,IGF-I,TGFβ,bFGF)の発現を酵素抗体法により検討した。TNFα、IL-1、IL-6、PDGFは主として好中球、肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮、気管支細気管支上皮、気管支軟骨に発現した。IFNγ、TGFβはリンパ球、肺胞マクロファージに強く発現した。 IGF-Iは主として好中球、リンパ球、肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮、気管支細気管支上皮、気管支軟骨に発現した。bFGFはリンパ球、II型肺胞上皮、気管支細気管支上皮に発現した。総じて発現は各細胞種にbroadで特異性に欠ける傾向があった。 4, 上記症例におけるHE染色組織での病理学的変化と各種活性物質の発現とを対比したところ、MMP2,9、TIMPl,2は主としてUIP.DIPなどの慢性的な病変の進行に関与し、MMP3はAIP、BOOPなどの急性変化に関与していることが示唆される。NSIPは両者の中間的な発現を示し、臨床的な病態の性格を反映していた。
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