研究概要 |
一般の骨軟部腫瘍・甲状腺癌において,Werner症候群の原因遺伝子(WRN)がどのような役割を果たしているか検討するために,癌研究所で診断された一般の甲状腺癌68例,および骨軟部腫瘍55例の患者において,正常組織におけるヘテロの生殖細胞変異(germline mutations)を検討した. その結果,わが国のWerner症候群患者の50%を占めるmut4という変異を,骨軟部腫瘍例で1例,甲状腺癌症例で1例の計2例(1/62)の頻度で認めた. これから,WRNにおける変異の全頻度は1/31と推定される.これは,常染色体劣性遺伝病であるWerner症候群の発生頻度(50万人〜100万人に1人)で推定される一般集団における頻度200〜500人に1人より圧倒的に高い. このことから,WRNの変異は一般集団の骨軟部腫瘍や甲状腺癌の発生にも,重要な役割を果たしていると推定される.さらに,症例数を増やして確かめるとともに,癌を発症したヒトではなく,一般集団におけるWRN変異の頻度自体を推定する必要がある.
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