研究概要 |
本研究の目的は,われわれが作製したラット肝類洞内皮細胞の特異的抗体SE-1の認識する抗原を同定することである.この抗原は肝類洞内皮の特異機能に関連することが推測されており,類洞病態の解析に有用である. 現在までのところ数回のアミノ酸解析を行ったが最終的に配列決定には至っていない.しかし,現在行っている以下の方法でアミノ酸配列を決定することが可能と考えている. 1. ラット肝類洞内皮細胞の分離 ラット肝を門脈からコラゲナーゼを含むHanks液で30分間潅流した後,低速遠心で肝実質細胞を除去し,さらに非実質細胞分画をPercoll密度勾配遠心法により5層の細胞層に分画した.それぞれの層の細胞について類洞内皮の存在を電顕およびWestern blotで検討した.その結果,上から3層目の分画が抗SE-1抗体により最も強いシグナルを示し,電顕的にも細胞質内に多数の小孔を有する類洞内皮の存在が確認された. 2. Protein A affinity columnを用いたSE-1抗原の精製 SE-1抗体を吸着させたProtein A columnに上記の類洞内皮分画の溶解液を反応させ,十分に洗浄した後溶出した.この抗原液を濃縮した後Western blotで抗原の有無を検討したところ,SE-1抗原の存在が確認され,抗原が精製された. 3. プロテインシークエンサーによる解析 2で得られた精製抗原をPVDF膜に転写した後アミノ酸解析を行った.しかし,この試料からはまだ最終的な配列が得られていない.何らかの原因によるN端末のブロック,あるいは糖鎖による修飾等が考えられ,現在,さらに解析を行っている.
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