研究概要 |
hnRNP A2/Bl蛋白に対するモノクローナル抗体を作成し組織発現の検討をおこなった結果,その発現は組織特異的に変化し,精巣特異的なisoformが存在することを見出した.各isoformをクローニングし,塩基配列を決定した.A2/B1遺伝子からはexon2及びexon9の選択的スプライシングによりA2,B1,BO^a,BO^bの4種の蛋白が生成されることが明らかとなり,isoform間で蛋白-核酸,蛋白-蛋白結合に違いが生じることが予測された. A2/B1 isoformのリコンビナント蛋白を作製し,一本鎖テロメアDNAとの関係に着目し検討した.各isoform蛋白と一本鎖テロメアDNA配列に対する結合能を比較検討した結果,テロメア反復配列の最小単位である6塩基(TTAGGG)に配列特異的に結合し,その結合強度は,A2=BO^a《B1≦BO^b蛋白の順で,BO^b及びB1蛋白の平衡結合定数はそれぞれ2.15X10^<-7>Mおよび1.85X10^<-7>Mであった.さらに,BO^b,B1蛋白はテロメア配列DNAと結合し,ヌクレアーゼからの保護作用を示すこと,テロメラーゼのテロメア伸長反応を亢進させることが明らかになった.精巣は生理的にテロメア長が維持される組織であることから,精巣特異的に発現されるBO^b蛋白は,機能的な一本鎖テロメアDNA結合蛋白の有力な候補であると考えられた. A2/B1蛋白の病的な意義の一つとして,自己免疫疾患において抗A2/Bl自己抗体が上げられる.そこでリコンビナントA2/B1蛋白を用いてリウマチ性疾患の患者血清中の自己抗体を検討した結果,RA,SLE,PSSで抗A2/Bl抗体価が上昇することが確認された.今後,老化,癌化との関係から注目されるテロメア維持機構におけるBO^b蛋白の機能,および抗A2/B1自己抗体の病的意義の解明に向けてさらに解析を進める予定である.
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