研究概要 |
癌の発生、進展には複数の癌抑制遺伝子の不活性化が関与していることが明らかになってきている。大腸癌でも5番,17番,18番染色体上の欠失領域からAPC遺伝子、p53遺伝子、DCC遺伝子,DPC4遺伝子が単離、同定されている。しかし、1番番染色体短腕上でも高頻度に欠失が認められることから大腸癌抑制遺伝子の存在が示唆されている。そこで、1番染色体上の大腸癌抑制遺伝子を単離するために、正常1番染色体短腕34-36領域の移入により造腫瘍性が抑制された大腸癌細胞と、36領域の一部が脱落し造腫瘍性が再発現されたリバータント細胞からpoly(A)RNAを調整し、オリゴテックスを用いてサブトラクションを行いcDNAライブラリーを作製した。cDNAをプローブにスクリーニングを行い、移入細胞特異的に発現しているcDNAクローンを得たので、これらの塩基配列を解析しホモロジー検索を行ったところ既知の遺伝子との類似性は見い出されなかった。この遺伝子の組織での発現を調べたところ、正常粘膜で強く発現していたが大腸癌ではほとんど発現していなかった。各種組織での発現を調べると大腸、小腸をはじめ心臓、胎盤、卵巣、精巣などでも発現しており、また、ニワトリ、マウス、サル、ウサギ、牛、犬などでも発現していることから、この遺伝子は種を超えて保存されていることが分かった。現在 RACE法により完全長の遺伝子の単離を試みている。
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