研究概要 |
1.キメラマウス胃粘膜凍結潰瘍,カテコール投与.,放射線照射各モデルにつき,再生腺管のクロナリティーを解析した.組織学的ならびに遺伝子レベルで,再生腺管の単クローン性とBALB/C優位の系統差を見い出したが,性差は明らかではなかった. 2.腺管分離法による再生腺管の単離は,これまでのところ成功していない.多くの場合再生腺管は間質と強固に癒着し,腺管形態が不完全であり,分離の途中で壊れるからである.そこで,放射線照射ラット胃粘膜に生じる腸上皮化生は,再生に伴う変化として再生腺管に高頻度に生じると考え,化生腺管の単離と遺伝子解析を試みた.化生腺管は容易に単離でき,胃と腸の細胞分化マーカーを用いた染色で化生の有無が識別可能であった.現在,p53,K-ras,H-ras,APCの各遺伝子についてその変異を解析中である. 3.MNU実験胃癌発癌過程と再生変化との関連については,キメラマウス腺胃粘膜にMNUとカテコールを投与する実験系で検討した.これにより腺胃粘膜には,再生上皮,過形成,腺腫,腺癌の4種の病変が形成された.これらの相互関係は現在不明である.免疫組織化学的検討で得られた結果では,再生上皮,過形成は腺管単位では単クローン性だが,病変全体は多クローン性であった.腺腫と腺癌の多くは単クローン性であったが,一部の大きな癌は多クローン性であった.これは別個の腫瘍が各々の成長過程で衝突し接合したものと考えられた.これらの病変にも系統差が見い出された.BrdU投与のデータでは,正常状態では系統による細胞増殖のスピードに差は認めなかった.しかし過形成でしばしば観察される,粘膜下に潜り込むような病変はBALB/C優位であり,細胞レベルでの反応性の違いが示唆された.現在これらの病変の相互関係を,クロナリティーと遺伝子レベルの解析結果を踏まえながら考察中である.
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