研究概要 |
マウスに経口感染させたマンソン裂頭条虫擬充尾虫の頭節には多くの腹腔マクロファージが付着するが、組織寄生が可能である。我々は擬充尾虫がマクロファージの一酸化窒素合成酵素(iNOS)の遺伝子発現をin vitroで直接抑制することを見いだし、そのより詳細な宿主・寄生虫関係を解明するため以下の実験を行った。 マウス腹腔マクロファージにLPS(100ng/ml)と同時に5隻のマンソン裂頭条虫擬充尾虫を添加した場合,6時間後のIP-10とJEchemokineの発現抑制比率はそれぞれ51.3%,44.9%であった。また,マクロファージの培養液中に擬充尾虫のみ加えて1-6時間培養した後にLPSを添加し3時間後の遺伝子発現をみると,擬充尾虫との前培養の時間が長いほどIP-10とJEの遺伝子発現の抑制比率は高く、6時間の前培養ではそれぞれ87%、63%であった.一方,TNF-αは46%の抑制が認められた.Northern Blot分析すると、マクロファージのiNOSの遺伝子発現は擬充尾虫の培養上清(ES)の24時間の前添加によって顕著に抑制され、抑制比率は82.6%で、このnitriteの産生は86.8%抑制された.このように,擬充尾虫はiNOSだけでなくchemokineやTNF-αの遺伝子発現も抑制することが明らかになった。 ESを24時間前添加したマクロファージでは、ES除去後の培養時間が24、48、72時間と長くなるほどIFN-γとLPSによる遺伝子発現の抑制効果の減弱が認められたが、72時間後においても、positive controlに対して、顕著な抑制効果が持続していた。 擬充尾虫の培養上清を5μg/ml濃度とごく微量添加するのみでマクロファージの遺伝子発現を抑制する効果が認められ、LPSなどの刺激を受けるまでの時間が長いほど抑制効果が顕著で、この抑制効果は72時間以上継続することから、擬充尾虫由来の抑制因子はin vivoでも機能してると推察された。
|