研究概要 |
Spirometra erinaceieuropaei plerocercoidを牛血清アルブミンと濃度を変えたアラキドン酸(AA)(0.1,0.5,1,2,5mM)とともに25℃の温度下で60分間培養し、産生される虫体内のプロスタグランディン(PG)類をガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー分析により定量した。PGD_2が、0.5,1,2,5mMのAAで培養した虫体内で検出され、検出量はそれぞれ0.298μg/g,0.356μg/g,0.336μg/g、0.62μg/gであった。PGE_2も虫体内で検出され、2mMのAAで0.703μg/g,5mMで1.915μg/g産生された。PGE_2は、5mMのAAで培養した培養液中にも0.250μg/g検出された。他のPG類は検出されなかった。 培養時間を0、15、30、60分に区分し、5mMAAで培養すると、15分でPGF_<2α>が虫体内で0.372μg/g検出され,6-keto-PGF_<1α>が30分で0.444μg/g,さらに1時間でPGD_2が0.893μg/g、PGE_2が2.760μg/g検出された。PGE_2のみ培養液中に1時間の培養で0.357μg/g検出された。TXB_2は、dose-、time-dependent courseどちらにおいても検出できなかった。各PG産生量の経時的変化と幼虫移行症との関係が示唆された。 脂肪酸、特にAAの吸収、脂質分画への組み込み及び分画間の交換について、温度及びpHの条件を変えて観察し、この寄生虫内でのAAの動向を明らかにした。24時間、宿主ヘビ血清で培養すると、18℃の低温の方が37℃の高温と比較し、AAの吸収が盛んであった。従って、低温の宿主に感染した際のAAの吸収・活用が幼虫迷入に関連しているいることが示唆され、人間などの恒温動物に感染した際は、腸管内容物のAAの量が重要であると考えられた。
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