研究概要 |
ツルグレン法を用いてタテツツガムシの分布を草地・自然林およびスギ林で比較したところ,自然林で最も多く,草地やスギ林でも多数の個体が生息してた。その結果,タテツツガムシンの生息地として最適とされている草地だけでなく,これまで適していないと考えられていた自然林やスギ林も重要な生息地となっていた. 山間部の道に沿って約1km間隔で黒布法によるタテツツガムシの採集を5地区で実施した.その結果,52地点のうち41地点(78.8%)でタテツツガムシが見つかり,鹿児島県ではタテツツガムシが広範囲に分布していることが確認された. 加世田市・姶良町及び大隅町でアカネズミの捕獲をツツガムシ病の流行が終った1〜3月に実施し,間接蛍光抗体法によるアカネズミの血清からのツツガムシ病リケッチア抗体の検出を行った.その結果,捕獲されたアカネズミ18頭のうち10頭(55.6%)からツツガムシ病リケッチア抗体が検出され,野鼠が高率で抗体を保有していることが明らかになった. ここ数年間に3症例(そのうちの2例は夫婦)が発生した姶良町上枦山の山沿いの地域で,患者の住宅敷地内5ヶ所と裏山15ヶ所でタテツツガムシを採集し,PCR法を用いて,タテツツガムシからツツガムシ病リケッチアDNAの検出を試みた.その結果,敷地内の1ヶ所と裏山の3ヶ所からツツガムシ病リケッチアDNAが検出された.PCR産物を制限酵素で処理して得られたDNA断片の分析により,検出されたリケッチア型はKarp,KawasakiおよびKuroki型であった.これらの結果から,鹿児島県のツツガムシ病媒介者がタテツツガムシであることが実証され,複数のリケッチア型が狭い地区でも混在していることが明らかになった.
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