研究概要 |
本研究の目的は病原大腸菌が産生する細胞壊死毒素(CNF)がどのようなメカニズムによって低分子量G蛋白質であるRhoや他のRhoファミリーに属する低分子量G蛋白質を活性化するかを明らかにすることであった。我々は大腸菌の共発現系を用いてこの毒素の低分子量G蛋白質に及ぼず作用について検討した。そこでCNF2の遺伝子cnf2と低分子量G蛋白質RhoA,Racl,Cdc42のcDNAを一緒にクローン化した大腸菌形質転換株を作成した。同様にしてCNF1の遺伝子cnf1と低分子量G蛋白質RhoA,Racl,Cdc42のcDNAを一緒にクローン化した大腸菌形質転換株を作成した。これらの低分子量G蛋白質はアミノ末端側にFLAGとよばれるアミノ酸配列を有しており、FLAG配列に結合するモノクローナル抗体を結合させたセファロースビーズを用いて精製できる。そこで我々はCNFによって修飾されたあるいは修飾されていない低分子量G蛋白質を精製し、その内在性GTPase活性、GAP刺激下でのGTPasc活性、GTPrS結合活性を調べた。その結果、CNF2はRhoとRac1のGTPase活性を阻害したがCdc42は影響を受けなかった。一方、CNF1はRhoとCdc42のGTPase活性を阻害したがRac1は影響を受けなかった。CNF2によって修飾されたRhoAを分析した結果、63番目のグルタミンがグルタミン酸に脱アミド化されていることがわかった。さらに脱アミド化されたSwitchIIドメインにたいして作成したポリクローナル抗体を用いたウェスタン分析の結果、上記の結果を支持する結果を得た。以上のことからCNF2はデアミデース酵素活性を有しており、RhoA、Raclを脱アミド化するがCdc42には作用せず、CNF1はRhoA、Cdc42を脱アミド化するがRaclには作用せず、基質特異性が異なることが分かった。
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