研究概要 |
Bacteroides属は無芽胞偏性嫌気性ダラム陰性桿菌のうち臨床材料からの分離頻度が最も高い。本属の菌種間のゲノム構造そのものの相違が分類・同定の新たな基準となりうるかを以下の方法で調べた。 B.fragilisおよびその近縁種のゲノムサイズをPFGEにより決定した。B.fragilis,B.thetaiotaomicron B.ovatus,B.distasonis,B.eggerthii,B.uniformisおよびB.vulgatusの染色体DNAを制限酵素CeuIで切断し、断片の長さを合計することによって各菌株のゲノムサイズを求めた。その結果、B.fragillsは5.3Mb,B.distasonisは4.8Mb,B.eggerthiiは4.4Mb,B.ovatusは6.9Mb,B.thetaiotaomicronは4.8Mb,B.uniformisは4.6Mb,B.vulgatusは5.1Mbであった。Bacteroides属の7菌種をCeuIの認識部位の数から、4個のCeuI部位をもつもの(B.eggerthiiおよびB.uniformis)、5個(B.ovatus)、6個(B.fragilisおよびB.thetaiotaomicron)、7個(B.distasonisおよびB.vulgatus)に分類することができた。この結果に基づいてBacteroides属の進化系統樹を作成し、16SrRNA遺伝子の類似性に基づく進化系統樹と比較した。両者は総体的には一致していたが、B.distasonisとB.vulgatusは類似性が高いこと、B.thetaiotaomicronはB.ovatusよりB.fragilisに近縁であることが明らかになった。 16S-23S ribosomal RNA遺伝子間に存在するスペーサー領域を標的としたPCR増幅産物がBacteroidesの菌種鑑別が可能であるか否かを検討した。その結果、Bacteroides属の7菌種の16S-23S rRNAスペーサー領域の増幅産物のサイズおよび制限酵素 MspIによる切断パターンに相違が認められ、Bacteroides属各菌種の鑑別が可能であった。さらに、これらの増幅産物の塩基配列を決定して比較した結果、菌種間でよく保存されている領域と菌種によって特異的な領域が認められた。この領域の塩基配列の相違は菌種同定のためのプローブとして利用できると考えられる。
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