研究概要 |
Rickettsia japonicaは我々により分離同定され,東洋動物地理区に特有の紅斑熱として東洋紅斑熱と命名された疾患の病原体である。R.japonicaの主要な外膜蛋白質 rOmp A,rOmp Bは免疫原性を担っており,宿主細胞内への侵入および感染防御において重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では,R.japonica ompA,ompB遺伝子の塩基配列(DDBJ Accession Numbers:D28766,AB003681)を基に設定したプライマーを用いてR.japonicaゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い,その産物を発現ベクターpET-21a-d(+)に組込み,大腸菌BL21(DE3)をトランスフォームした。IPTGにより封入体として発現された組換え蛋白質を尿素で可溶化後,アフィニティーカラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果,SDS-ポリアクリルアミド電気泳動法およびウエスタンブロット法においてそれぞれ単一のバンドとなった。透析による尿素除去の際に,シャペロニンGroE,ATPを共存させ,蛋白質のリフォールディングを行わせ,可溶性に変化させた.これらの組換え蛋白質およびrOmp A,rOmp Bに対する特異抗血清を用いて,紅斑熱群リケッチアの宿主細胞への付着に及ぼす影響を解析した.その結果,何れの抗血清,組換え蛋白質ともに若干の付着抑制効果を示した.また,組換え蛋白質のコンフォメーションは菌体上に存在する蛋白質のものと異なっていることが示され,機能に及ぼすコンフォメーションの重要性が示唆された.また,rOmp A,rOmp Bの表現型,遺伝子型を主な指標として,東洋紅斑熱の患者より分離された9株の病原リケッチアを解析したところ,同一の型に属することが示され,付着に関与する主要表面抗原蛋白質rOmp A,rOmp Bが紅斑熱群リケッチアの型別の指標として有効であることを明らかにした.
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