研究概要 |
現在更に我々は、最も免疫原性の高いDNAワクチンの開発を行っている。まず、DNAワクチンの遺伝子発現プロモーターをいくつか変えて、最も免疫原性の高いワクチンの開発と同ワクチンの接種ルートによる、免疫応答に質的変化が生じるのかどうかの検討を行っている。次に、新しく作製したIL-12,IL-2,GM-CSF等の発現プラスミドをアジュバントとしての混合割合等を小動物レベルで検討している。アジュバントの開発としてはウベニメックス,リポソーム等が免疫原性を高めることが判明した。HIV-1のA型、B型、C型、E型、マクロファージトロピック型(BAL型)等の、gag,pol,envのDNAワクチン候補を次々に作製してその免疫原性等も詳細に検討して、現在臨床試験に向けて検討している。更に、免疫原性が高いものとして、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus,AAV),欠損アデノウイルス(deficient adeno virus),ワクチニアウイルス等のウイルスベクターワクチンを作製し、免疫したところ、強いEnv特異的免疫活性化能が認められた。現在、これらウイルスのベクターをして使用した新しい型を作製中である。緑膿菌については我々はべん毛抗原をコードしている遺伝子を用いてワクチンとしてマウスに免疫し、防御効果を検討したが、あまり強い防御効果がなかった。 今回の検討により、DNAワクチンとウイルスベクターワクチン等の組み合わせが、有効性の高いエイズワクチンとして有効であると考えている。DNAワクチンの接種ルートの検討では、経鼻投与,筋肉内投与,更には各種アジュバント物質との組み合わせで、Th1あるいはTh2の免疫応答を選択的に増強させることもある程度可能になった。我々はこれらの研究に全力をつくし、将来的にはHIV-1のnef,tat,rev,env,gag,pol等の遺伝子を変異させ、安全性に全く問題の無いウイルスを作製する。この弱毒生ワクチンがHIV-1の最良のワクチンとなる可能性が高いと思える。勿論、DNAワクチンは現在のDNAワクチンのプロモーター等でも肝炎、インフルエンザ、狂犬病、癌等の幾つかのワクチンとして極めて有力なものとなると考えられる。DNAワクチンが更に有効性の高いものとなるため、新しい、プロモーターの開発、蛋白発現の上昇、DNAの分解阻止、アジュバント等の改良が必要と思われ、研究を続けている。 今回の実験をもとにして、次に大型動物を使用した有効性の検討を行う。更に、緑膿菌については今までべん毛のみのDNAワクチンであったが更に、線毛やいくつかの菌体抗原遺伝子を使用して、このワクチンの緑膿菌感染予防効果を検討する。
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