研究概要 |
クラスA型β-ラクタマーぜ遺伝子の変異による質的変異酵素産生菌は、第三世代セフェム薬を加水 分解して耐性となる。この変異酵素ESBLについては、わが国では殆ど解折されていない。当研究課題では、2年間に亘り新たな臨床分離の大腸菌と肺炎桿菌を中心に700株中のESBLを検討した結果、ピペラシリン(PIPC)耐性菌(class A型酵素産生菌)は検査株全体で14-25%前後の頻度で分離された。一方、検出したPIPC耐性の98%以上がPIPCにのみ耐性を示す株であった。これらPIPC耐性菌の中でプラスミド性のセフォタキシム(CTX)やセフタジヂム(CAZ)、アズスレオナム(AZT),セフポドキシム(CPDX)などのセフェム薬耐性菌が全体の1.2%,計18株を分離した。しかし、これらセフェム耐性菌は施設間0.1-6%と大きな偏りが見られた。PIPC./セフェム耐性(18株)はその酵素の基質特異性からPIPCに加えてセフェム薬を良好な基質とし、それに伴って菌株のMICもCPDX>CTX>CAZ,AZTであり、class A型酵素阻害薬およびセファマイシン、カルパペネムに対して感性であったことから、18株はESBL型酵素であると予測された。PCR法により遺伝子同定をしたところ、18株のESBLsはTOHO-1型が14株、KTT-1型3株、TEM型が1株であった。 今回の結果は、本邦のESBLsはTOHO-1が多く、次いでKTT-1,であり、TEMの少ないことが判明した。今後ESBLs産主菌出現と抗菌薬との関係についてさらに検討する必要がある。
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