研究概要 |
Helicobacter pylori TK1402株を無菌(GF)マウスに経口接種(10^8-10^9cfu/0.5ml,3日間連続投与)した結果,感染9週にわたるまで安定な本菌の持続感染が認められた。幽門部粘膜には著明な炎症細胞の浸潤と部分的な粘膜萎縮が検出され,GFマウスはH.pyloriの定着-持続感染のモデルになり得ることが示された。また感染マウス糞便より本菌の存在を免疫磁気ビーズ法とPCR法との併用により検出することができた。本法により感染マウスを斃死させることなく,定着H.pylori,を評価することが可能となった。 H.pyloriの熱ショック蛋白(HSP60)は本菌の胃上皮細胞への付着に関与することがin vitro実験で示された。また本菌を抗HSP60モノクローナル抗体で前処理することにより,無菌マウスへの胃内定着菌数が著減することか明らかにされた。本結果はin vivoでもHSP60が本菌の胃上皮細胞への付着に深く関与することが示された。HSP60のGFマウスへの経口投与は胃粘膜に著名な病変を引き起こさなかった。 しかし,HSP60経口投与後,H.pyloriの感染を行った結果,対照に比べ胃炎病変の増強が認められたが,定着菌数の著明な減少がみられた。 H.pylori定着マウスへのイミダゾール誘導体およびLactobacillus salivarius又はClostridium butyricumの投与により,H.pyloriの除菌が認められた。これらの結果はGFマウスが副作用(下痢,耐性菌の誘導等)のない抗菌剤(因子)の開発および評価に有用であることを示している。
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