研究概要 |
【目的】歯周病原菌であるP.gingivalis(Pg)のリピドAは,弱毒性であるにも関わらずLPS不応答性C3H/HeJマウス由来細胞に対して活性を示すなど特徴的な性状を有していると言われている.申請者は,本リピドAの構造と活性の関係を解明する目的で,当該年度内にPg型リピドAアナログの化学合成およびその生物活性について大腸菌型合成リピドAと比較検討した. 【方法】Pg型合成リピドAの調製;平成10年度実績概要に記載した.生物活性;リムルステストは合成基質法,シュワルツマン反応はウサギを用いた局所反応,マイトジェン活性はマウス脾細胞に対するチミジンの取り込み量の測定,サイトカインの産生誘導能はマウスマクロファージからのTNFα,IL-6産生量をELISA法で測定した.また,ヒト歯肉線維芽細胞からのIL-8産生誘導能の活性測定も行った.対照として大腸菌型合成リピドAである506(第一化学株)を用いた. 【結果および考察】Pg型合成リピドAは,1と4'位にリン酸基を持つβ(1→6)結合グルコサミン二量体バックボーンに2,2'および3,3'位にそれぞれ(R)3-OH iC17,(R)3-O-(C16)-iC17,(R)3-OH C16及び(R)3-OH iC15が結合した構造である. Pg型合成リピドAの生物活性としては,本合成リピドAにはLPS不応答性マウスに対するマイトジェン活性およびTNFαとIL-6産生誘導能は全く認められなかった.一方,本合成標品はリムルステストとシュワルツマン反応およびLPS応答性マウスに対するマイトジェン活性およびTNFαとIL-6産生誘導能については対照の506とほぼ同程度の活性を示した.さらに,ヒト歯肉線維芽細胞からのIL-8産生誘導能においても,本標品は506と同様の活性を示した.以上の結果から,Pg型合成リピドAの生物活性は大腸菌型合成リピドAと同様の傾向を示すことが明らかになった.
|