研究概要 |
毒素原性大腸菌の易熱性下痢毒素(LT)は、A,Bサブユニット(A,B)から構成される。AはA1フラグメント(A1)を遊離し、A1が細胞膜に入りadenylate cyclase/cAMP系を刺激して毒性を示す。Bは受容体(GM1)に結合し、A1の膜侵入の手助けをしている。一方、endocytosisでも毒素が細胞内に入ると報告された。しかしGM1以外の細胞成分が関与するか、毒性への意義は不明である。そこで、endocytosisに関与する物質の解明、その生物学的意義を明らかにする目的で本研究を企画し、以下の結果を得ている。 (a)毒素のendocytosisに、GM1以外の細胞成分が関与するか検索した。その結果、BをSDS-PAGEで分子量約1万程度移動させる細胞成分が、LT共に細胞内に入ることを明らかにした。(b)A1を遊離できない変異毒素が、部分的毒性を示す。これはA1以外の活性を持つフラグメントが標的細胞で作られることを示す。さらにこの部分的毒性にendocytosisが関与する可能性がある。(c)GM1欠如した細胞を超音波処理して、ウサギに免疫をし、Bサブユニットの細胞内侵入を遅延させる抗体を作成に成功した。現在この抗体をビオチン化して抗体と反応する細胞分子の検索を行っている。 以上の様にGM1以外の細胞成分がendocytosisに関与している事を明らかにした(a,c)。さらに生物活性への関与を示唆する結果を得ている。現在細胞成分の解析を行っている。
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