研究概要 |
我々は、ダニ主要アレルゲンDer f Ip18-31ペプチドをHLA-DQ6拘束性に認識するヒトThOクローンを用いた解析により、アナログペプチドを介したT細胞からのIFN-γ産生増強に先立って、APCからのIL-12の産生増強が起こっており、これがIFN-γの特異的産生増強を誘導したことを示した。このことより、HLA-ペプチド-TCR相互作用において、HLAは単にペプチドをT細胞に提示するという役目だけでなく、APC内へのシグナル伝達を担う分子として機能している可能性が高いと考えられた。すなわち、HLAあるいはHLAと会合している分子を介してAPC内へ伝達されるシグナル、およびそれにより誘発されるAPC応答を解析することは、これらを介した免疫制御機構を知る上でも重要であると考えられる。本研究ではクラスIIHLA分子を介したシグナルがAPCの機能(特にモノカインの産生パターン)を変化させ、その効果がDR,DQ,DPごとに異なっていることを明らかにすることができた。シグナルの生化学的解析も現在進行中であり、知見を蓄積しつつある。今後の課題としたい。 HLAの多型性(個体差)と多様性(DR,DQ,DPなど)は、人類が集団として対応できる抗原の種類を増やしているばかりではなく、1個体が特定の抗原に対して応答する際の「質」の種類をも増やしていると考えられる。多重遺伝子族としてのHLAはさらにT細胞レパートリーの形成にも深く関わっているに違いない。この意味でHLAには免疫応答遺伝子としての機能のみならず、「免疫分化遺伝子」とでも呼ぶべき機能が与えられているといえよう。言葉を変えれば、それこそが広義の免疫応答遺伝子であり、HLAの機能的本態ではなかろうか。
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