研究概要 |
C57BL/6,BALB/c,BALB/c(nu/nu)にPropionibacterium.acnes(P.acnes)を投与した後,LPSを投与することで、エンドトキシン肝障害が誘導される.申請者はこの実験系を用いて以下のことを明らかにした。先ず、P.acnesからLPSチャレンジするまでの7日間にinduction phaseには、P.acnesを貪食したKupffer細胞が産生したIL-12が、最初に肝内T細胞をType-1T細胞(IFN-γ産生細胞)に分化させ,またNK細胞を活性化する。次に、TYPE-1T細胞が産生したINF-γが,Kupffer細胞を活性化する。次に,LPS投与から肝障害までのeffector phaseでは、IFN-γで活性化されたKupffer細胞はLPSで刺激されることで、IL-12の産生が増強されるとともに、新たに大量のIL-18を産生する。IL-18はType-1T細胞と肝に定住するNK細胞に作用して、IFN-γの産生を誘導するとともにFasligand(FasL)の発現を誘導することで肝細胞アポトーシスを起こす.IL-18はIL-12との相乗作用でIFN-γを誘導するとともに、TNF-αを誘導することにより肝障害を増強する. そこで、今回、induction phaseのP.acnesをIL-12に、effector phaseのLPSをIL-18で置換できるか否かを試みたが、LPSは、IL-12/IL-18で置換できたが、P.acnesはIL-12に置換できなかった。更に、ヌードマウスにおいて、P.acnes/LPSで誘導される肝障害は、抗asialoGM1抗体処置により抑制された。このことからヌードマウスでは,肝NK細胞群がeffector細胞として作用していることが考えられた。そこで,effector細胞を確認するために,肝リンパ球のFasLmRNA発現を検討すると抗asialoGM1抗体処置では、FasLmRNA発現の誘導は完全に抑制された.更に,肝NK細胞群(CD3-IL-2Rβ^+細胞)と肝内T細胞群(CD3^<im>IL-2Rβ^+T細胞)をsortingし,FasLmRNA発現を検討した結果,肝NK細胞群(CD3IL-2Rβ^+細胞)ではFasLmRNA発現を認めたが,肝内T細胞群(CD3^<im>IL-2Rβ^+T細胞)ではFasLmRNA発現を認めなかった.そこで,IL-18刺激によりFasL発現を増強させた肝NK細胞株をP.acnes処置マウスに移入すると肝障害が誘導された。これらの結果からP.acnes/LPSで誘導されるヌードマウスの肝障害は肝NK細胞のFas-FasL系を介した肝細胞アポトーシスにより誘導されることが明らかになった。
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