研究概要 |
本研究の主眼は、骨の健康についてこれを女性の生涯の健康問題として捉える立場にある。すなわち、小・中学生、高校生、大学生の若年女性を対象として、食事、運動など生活習慣と骨密度および骨密度の変動における遺伝と環境要因の重みを検討したものである。 対象者は小学生1,529名、中学生985名、高校生1,056名、大学生1,025名である。骨量の測定方法は、乾式超音波法(AOS-100,ALOKA)とDIP法(Digital Image Processing)によった。骨量の測定時に、あらかじめ配布した自記式の質問紙を回収した。質問紙の主な内容は、既往歴、運動、食事や嗜好、初潮や生理の状態(女性)である。骨量と質問紙の結果から、骨量の変動に関与する要因を小学生と大学生を中心に検討した。また大学生については三日間の食事記録の資料が得られているため、一部の例について栄養素摂取および運動など生活習慣と骨量との関連を分析した。骨粗鬆症のリスク評価の方法として、食事や運動など生活要因を中心とする環境要因と遺伝など生物要因を同時に考慮するモデルにより、骨量の変動を解析することが本研究の柱の一つである。ここでは解析モデルとしてパスモデルを想定し、骨量変動における遺伝と環境の交互作用について検討した。 骨量と食事との関連分析においては、食物摂取パターン分析において示される脂質摂取に偏った食事は、骨量減少に結びつく可能性があることが示唆された。パスモデルを応用して骨量変動における遺伝率と環境寄与率を計算したところ、それぞれ14%、6%と低値であり、偶然変動による誤差が高値であるとの結果となった。ただし今回は兄弟姉妹の組み合わせのみによる結果であり、今後はさらに親子、いとこ等の組み合わせを考慮した解析が必要である。
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