研究概要 |
老化による過酸化脂質の蓄積およびその関連酵素の活性を検討した結果、TBA反応値は週齢が進むにしたがって上昇が認められた。また、カタラーゼ活性は海馬、小脳部位で週齢増加に伴い活性の上昇が認められ、SOD活性は小脳での減少が認められた。GSH-PX活性は海馬で、週齢増加に伴い低下が認められた。一方、脳中のミネラル(Ca, Zn, Cu, Mn, Mg, Fe)の週齢による変動について検討した。その結果、MgおよびFe量は週齢の変化によって変動は生じなかった。Ca量は、週齢の増加に伴って増加を認め、特に海馬において著しかった。Zn量についても全脳においては週齢の増加に伴い増加するが、皮質、海馬、その他の部位では著しい変動はなく、小脳において増加が著しかった。Cu量は、週齢の増加により小脳での増加は認めたものの、小脳以外の部位での変動は著しいものではなかった。Mn量は全脳においては週齢の増加に伴う増加が認められた。しかし、その他の部位では一定の傾向は認められず、皮質と小脳において増加が認められた。 一方、SOD活性を細胞質中とミトコンドリア中で測定したところ、いずれも皮質、海馬、その他の部位では変動が認められなかったが、小脳では活性の低下が認められた。この結果と小脳でのZn, Cu, Mnの増加を認めた結果との関連を今後検討すると興味ある結果が得られると思われる。 次に、脳中に存在する抗酸化物質の週齢の変化に伴う変動について検討した結果は以下の通りであった。 1.アスコルビン酸量は、脳のいずれの部位でも週齢の増加に伴う低下傾向を示した。 2.グルタチオン量は、老化に伴う一定の変動は認められなかったが、他の部位よりも小脳部位で高値を示した。 3.レチノール量は、小脳、その他の部位で週齢の増加に伴う低下を認めた。 4.α-トコフェロール量は、老化に伴い特に小脳部位で減少が認められた。 5.SOD活性は、老化に伴い小脳部位において活性低下が認められた。 6.カタラーゼ活性およびGSH-PX活性は、SOD活性と反対に老化に伴い小脳部位での活性上昇が認められた。 7.TBARSは週齢の増加に伴い増加を認めたが、特に小脳部位で著しく増加した。 以上の結果から、老化に伴う過酸化脂質蓄積の影響が大きいのは小脳であると考えられる。
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