研究概要 |
一般思春期生徒と思春期臨床患者に対して,質問紙法(DSD)と面接法(SCID)を組み合わせて,うつ状態に関する疫学調査を行なった.一般集団の調査は群馬県北部の公立中学校2校の2年生全員を対象とした.有効回答者はDSDで259名中238名(91.9%),SCIDで191名中164名(85.9%)であった.MDE(大うつ病エピソード)陽性者はDSDで16名(有病率6.7%),SCIDで17名(10.4%)であり,これらは先行研究の結果とほぼ一致した.一方,DSDとSCIDのMDE判定の一致度は必ずしも高いとは言えず(n=157,Kappa=.163),下位カテゴリーを見ると「食欲・体重の変化」と「集中困難」において一致が低かった.うつ状態に対するリスク要因について多重口ジスティックモデルを用いて調べたところ,DSDで判定した場合,女子は男子に比べて3.3倍ほどリスクが高く,「学校に行きたくても行けないような気がする」者はそうでない者に比べて3.1倍ほどリスクが高く,「いじめられている」者はそうでない者に比べて3.3倍ほどリスクが高かった.また,精神科思春期外来を訪れた10才から18才までの不登校,摂食障害など思春期男女の患者34名からDSDを採取し,この内14名にSCIDを施行した.MDE陽性者はDSDで8名(23.5%),SCIDで7名(50.0%)であった.臨床群ではDSDとSCIDのMDE判定の一致は比較的良かったが(n=14,Kappa=.571),下位カテゴリーでは「食欲・体重の変化」においてやはり一致が悪かった.しかし,「集中困難」ではむしろ良く一致し,一般集団とは異なる結果を示した.今後は臨床群の標本数を増やし,同時に詳細な医療記録との突き合わせを行い,個々の原因を調べる予定である.
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