研究概要 |
高齢化社会への対応として健康に自立して生きられる期間で、ある活動的平均余命(DFLY)を延長させ、要介護期間(DLY)を短縮することが重要である。本研究では、長崎県の大島町、大島村、伊王島町の2町1村で、保健婦等の協力を得て40歳以上の全住民約5000名の日常生活活動動作(ADL)レベルを評価し、小集団での寿命の延長短縮を算出する計算ソフトを作成し、平均要介護年数を算出した。40歳以上で寝たきり度J,A,B,Cに分類された虚弱割合は大島町男性4.1%(1495名中16.2%(45/278)、女性18.5%(73/394)大島村男性8.0%(40/500)、女性7.0%(44/626)、伊王島町男性16.2%(45/278)、女性18.5%(73/394)であった。屋内での生活に介助を要す(B)と、1日中ベッド上で過ごし、介助を要す(C)の合計割合(1000人あたり)を見ても、大島町男性7.6、女性18.2、大島村男性20.0、女性12.8、伊王島町男性68.3、女性63.5と、一般に大島町で要介護割合が少なく、伊王島町で要介護割合が大きかった。B,Cレベルの介護を必要として生存する平均年数は大島町、大島村、伊王島町の順に男性で3.1,7.6,14.9年であり、女性では6.5,7.1,15.4年であった。自立して生存する年数は女性の方が3つの町村とも長かったが、介護を必要とする年数も女性の方が長かった。伊王島町での介護需要が極めて大きいことが伺われ、その主要因は循環器系疾患、加齢による障害、精神障害であった。 伊王島町と大島町で健康増進活動を実施したが、今回の結果ではその効果が見られなかった。より長期的な観察が必要である。今回開発した計算ソフトの使用と保健婦による住民のADL把握によって、市町村における健康増進事業の目的と方法が明確になった。
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