研究概要 |
隔日勤務制をとっているタクシー事業所に勤務する40-55歳の男性ドライバーで,高血圧群12名,正常血圧群23名を対象とし,24時間勤務,明け,公休日の連続する3日間について,Holter心電計,携帯型自動血圧測定装置,身体活動量計を装着72時間連続測定し,タクシードライバーの職務と血圧および自律神経機能との関連について検討した.血圧の勤務日の平均値は両群ともに他の2日に比べて有意に高く,その差は,収縮期血圧では正常血圧群で11.1-15.1mmHg,高血圧群で13.8-22.2mmHg,拡張期血圧では正常血圧群で8.5-11.0mmHg,高血圧群で10.5-15.4mmHgであり,高血圧群の方が勤務日と休日の血圧の差が大きい傾向を示した.交感神経機能は勤務日と他の日との有意な差違はみとめられなかったが,正常血圧群,高血圧群ともに勤務日で高い傾向がみられた.副交感神経機能は,正常血圧群では有意差はないものの,高血圧群では勤務日が明けの日に比べて有意に低かった.喫煙の影響として,交感神経活動は,20-22時の時間帯で,喫煙後0-5分での上昇が有意であった.副交感神経活動は午後から夜半にかけては喫煙後に低下する傾向をみとめ,14-19時の時間帯の0-5分で有意であった.以上より,実車,空車,停車などの職務内容との関連は明らかではなかったが,タクシー乗務そのものが,血圧の高値持続,交感神経活動の亢進,副交感神経活動の抑制の方向に作用しており,特に血圧の高い群でその傾向が強いことが明らかになった.また,勤務中,特に午後から夜間にかけての喫煙は,0-5分後の交感神経活動の亢進と副文交感神経の抑制を生ずることが示された.
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