研究概要 |
本研究の研究目的は、岡山県をフィールドに、1)プライマリケアにおける問題飲酒者の頻度、2)プライマリケアにおける問題飲酒者の臨床的特徴(主訴、病歴、身体所見、一般検査)、3)発見のための方法(感度と特異度)、4)介入の仕方とその成功率、5)アルコール問題専門医との連携の取り方、などを明らかにすることである。 研究実施計画に従い、1997年度は、アルコール問題のスクリーニングのための"CAGE questionnaire"(Ewing JA,Detecting alcoholism,the CAGE questionnaire.JAMA 1984;252:1905-1907)の操作特性を検討するための質問表を作成した。質問表の主な内容は、1.背景情報;(年齢)(性別)(飲酒の程度)(喫煙の程度)(医療機関との関係;初診、定期通院等の別)、2.CAGEquestionnaireを翻訳した質問(本研究者訳)とKAST(久里浜式アルコール依存症スクリーニングテスト)を混在させた質問18項目、3.喫煙に関する質問8項目からなる。この質問表は川崎医大総合診療部外来、日本原病院外来、(山間地の病院外来)、奈義ファミリークリニック外来(山間地の診療所)、乾医院外来(郊外の診療所)、田坂内科医院外来(都市部の診療所)、ゆうクリニック外来(アルコール問題専門医)において配布した。 1998年度は、質問表の回収・集計を終えた。 1999年度は、質問表の解析をほぼ終えた。この集計からは、受診患者の飲酒率(1週間に3日以上飲酒する人の割合)は5施設の間に有意差は無く、5施設を合わせた平均は男性46.5%、女性9.9%であった。また、KASTが0点以上の問題飲酒者についても5施設の間に有意差は無く、男性12.6%、女性1.9%であった。これらの結果から、都市部・郡部、病院・診療所などの診療環境を問わず、プライマリ・ケアの外来において、男性患者に高率に問題飲酒者が存在することが明らかになった。また、男性では、70歳以上、女性では60歳以上の高齢者において問題飲酒者は有意に少なかった。以上の結果は論文にて発表した。 なお、アルコール問題スクリーニングのための"CAGE questionnaire"(Ewing JA,Detecting alcoholism,the CAGE questionnaire.JAMA 1984;252:1905-1907)の操作特性については現在解析を進めている。 今後、本研究の目的2)、4)、5)について引き続き研究を継続していく予定である。
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