研究概要 |
本研究は,身体的ハンディキャップを持った作業者ー特に高齢者及び身体障害者ーの視点から快適職場形成のための前提条件である「安全」および「衛生」について検証し,さらに,快適職場形成のためのソフト面(人的資源)について検討を加え,以下の成果を得た. 1. 快適職場形成因子:快適な作業環境を形成するための要因を知るために,安全衛生関連の講習会の参加者146人を対象として,[職場で不快,不満に思うこと]について自由回答を求めた.回答結果は,人間関係に関する回答が多かった.これらは,「快適職場指針」の目標事項に分類できないものであった. 2. 中高年労働者に対する法律上の配慮:「労働安全衛生規則,第3編衛生基準」の内容に関して,中高年労働者に配慮を必要とする条文とその問題点及び改善策を考察した.その結果,作業面の照度,表示物,休憩設備等に特に配慮が必要であることが分かった. 3. 身体障害者授産施設の作業者の疲労調査:当該施設で訓練を受けている作業者43人に対し,作業者の疲労感(自覚症状)を調査し,次の結果を得た.(1)自覚症状の出現様式は,一般型(I>III>II)に分類できた.(2)訴え率は,作業前および後とも他業種より高かったが,作業前後の訴え率の増加は他業種と同程度であった.(3)健常者と比べて,身体障害者の疲労回復の手段が限定されるので,前日の疲労が残るのではないかと推測した. 4. まとめー快適職場の実現とそのマネージメントー:快適職場の実現のためには,「快適職場指針」の実行に加えて,人間関係等の問題点を解決できるような仕組み(ソフト面;人的資源)造りが必要である.すなわち,物理的な環境以外の問題ー人間関係,集団中の個人差,職務満足等ーに対処できる人的資源として,産業ソーシャルワーカーの存在が有用と考える.ソーシャルワークとカウンセリング技術を習得した衛生管理者が産業ソーシャルワーカーに最も近い人材であると考える.ハンディキャップを負いやすい人たちのための安全で快適な職場を形成するためには,今後,衛生管理者に対して,ソーシャルワーク及びカウンセリングに関する教育を展開していく必要がある.
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