研究概要 |
最近、臨床検査ではHLA抗原のタイピングに、これらの抗原を支配する遺伝子のタイピングが用いられてきている。これまで新鮮な細胞でないとタイピングができなかったが、遺伝子さえ確保できれば型判定が可能であることから、法医学領域での有用性も期待された。しかし、臨床検査のように充分な量のDNAが使える機会を持たない法医学でのタイピングは制限される。そこで、法医学で得られるサンプルからでもHLA-DNAタイピングが可能な検査法の検討を行った。そのために,クラスII遺伝子とクラスI遺伝子にわけて検討した。クラスIIでは、PCR-SSP法によるlow resolutionタイピングと一部の遺伝子(DR2,4,8)については、更にPCR-RFLP法を行いhigh resolutionタイピングを試みた。さらに、検出感度をあげるために、nested PCRを行い型判定をした。これらの結果から少なくとも10pgのDNAがあれば型判定が可能であった。また、この検査では0.988の識別率が得られ法医学での検査に充分貢献できることが示唆された。また、クラスI遺伝子については、96種類のプライマーセットを作製し、96穴のマイクロプレート上で反応を行うPCR-SSP法によるlow resolutionタイピングを行った。この方法では、少なくとも総量1μg以上のDNAがないと全プライマーで反応できなく、正確なタイピングが可能でないことが示された。また、nested PCR,seminested PCRはクラスI遺伝子構造の複雑さと使用したプライマーの位置から良質なgeneric primerの設定ができなく検討しなかった。しかし、この方法で、今まで新鮮リンパ球が得られなければタイピングが不可能であったクラスIについてタイピングが可能となり、法医学領域で十分利用できることが、法医試料で確認できた。
|