研究概要 |
血縁関係のない人のDNAを鋳型にして,複合型マイクロサテライトであるD11S488座とD11S554座をPCR増幅した.増幅産物を変性ゲル上で電気泳動後,サザン・プロット法で検出した.D11S488座では,同じ電気易動度を示す同鎖長の262bpのアリールを,D11S554座では,237bp,225bpおよび217bpのアリールを複数個選びだした.塩基配列分析により,D11S488座の262bpのアリールは5種類,D11S554座の237bpのアリールは3種類,225bpと217bpのアリールはそれぞれ2種類の異配列のアリールを有してることが分かった. D11S488座の262bpのアリールを,非変性6%ポリアクリルアミドゲル上で4℃でSSCP分析すると,5種類のうち4種類を電気易動度の違いで区別することができた.D11S554座のアリールを,非変性5%ポリアクリルアミドゲル上で15℃でSSCP分析すると,それぞれを異なるアリールとして識別することができた. DGGE法を試みたところ,D113488座では20〜50%濃度勾配ゲルを,D11S554座では25〜35%濃度勾配ゲルを用いると,SSCP法と同様に異配列のアリールを区別できた.ただし,DGGE法では,長さの異なるアリールが同じ電気易動度を示すことがあった. D11S488座のSSCP分析を実際の親子鑑定2例に応用した.D11S488座を含むSTR4座を変性ゲルを用いて型判定すると,D11S488座では,2例の6人は見かけ上,同鎖長のアリールを持っていた.SSCP分析の結果,第1例では,子供と擬父がまれなアリールを共有しており,4座の総合父権肯定確率は上昇した.第2例では,子供は問題のアリールを母と共有し,擬父とは共有していなかったので,4座のうち3座で擬父が排除されることになった. SSCP分析は,同鎖長異配列のアリールを電気易動度の差異で迅速かつ簡単に検出する方法として有用である.
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