研究概要 |
平成9年度は、糖鎖の構造解析をより容易なものとするため、高速液体クロマトグラフィーで分析可能で、且つELISAやTLC-イムノブロッティングに使用可能な新規蛍光糖鎖標識試薬を作製する目的で、1,4-aminobenzoicacidと直鎖脂肪族アルコール(C8,C16)を用いて脱水縮合反応により疎水性の高い芳香族アミノエステル(amino-C8,amino-C16)を合成した。この標識試薬をヒドラジン分解により唾液ムチンより切り出したABO式血液型活性糖鎖の標識および構造解析に適用したが期待した結果を得ることはできなかった。 そこで平成10年度は、鎖長の異なる直鎖脂肪族アルコール(C12,C14)を用いて同様の蛍光糖鎖標識試薬を合成し、オリゴ糖の標識および構造解析への有用性について検討を行った。しかし、いずれの試薬も高速液体クロマトグラフィーによる標識糖鎖の分離とELISAおよびTLCによる分析の両方に適する特性を有していなかった。残念ながら本研究の基礎となる「芳香族アミノエステルを構成する直鎖脂肪族アルコールの鎖長を選択すれば高速液体クロマトグラフィーで分析可能で、且つELISAやTLC-イムノブロッティングに使用可能な新規蛍光糖鎖標識試薬に成りうる」と言う仮説の実証は失敗に終わった。以上の様に本研究は所期の目的を十分に達成し得たとは言い難い。しかし本研究の主題ではないが、多くのABO式血液型活性糖鎖に対するモノクローナル抗体を作製し、その内から法医学実務に有用な優れた特性を有するモノクローナル抗体を多数得ることができた。またさらに、異なった免疫法により糖タンパクの糖鎖あるいはタンパク部分に対するモノクローナル抗体を選択的に作製することが可能なことを明らかにした。
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