研究概要 |
反復性の軽微な物理侵襲に対する脳組織の反応を免疫組織化学的・超微細構造的に検討することを目的とした。臓器レベル・細胞レベルそれぞれにおいて変化を観察するため,二種の反復物理侵襲動物実験モデルを作成した。In vivoにおける脳の反復損傷モデルとしては,ラットWeight drop modelを作成し,病理組織学的,免疫組織化学的検討を行った。1回では組織学的に明らかな形態の変化を惹起しない程度の侵襲を繰り返し(3回)与えることにより,頭蓋骨骨折,肉眼的な頭蓋内出血・脳挫傷等を生ぜしめることなく,脳微細構造の病理学的所見が得られ,比較的経度のびまん性脳損傷モデルとして有用であると考えられるが,軸索の変化については,明確な所見が得られなかった。一方で,特に神経細胞の加速減速刺激に対する超微細構造的変化を見るため,培養神経細胞に水平単振動刺激を与えるin vivoモデルを考慮し,神経突起の損傷メカニズムの解明を試みた。このモデルにおいては反復侵襲の蓄積により軸索損傷を惹起しうることを示すことができたが,それだけでなく,軸索損傷発生時のretraction ballあるいはbeading形成の原因として,突起の筒状形態を保つ細胞骨格のネットワークの破壊と,それによる損傷部位の変形を指摘しうる所見が得られた。さらに腫大部は損傷を受けた神経突起の再生の場であり,神経突起の再生は腫大部の細胞骨格を再構築することで進行すること,この再構築は比較的短時間のうちに行われるが,その理由として細胞骨格ネットワークの破壊が主にアクチンフィラメントおよび細胞骨格のクロスリンキングの部分に生じ,長径方向の骨格は保存されていることなどが示された。
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