研究概要 |
タンパク質を直接標識できる新規ラベル剤4,4'-bis(1",1",1",2",2",3",3"-heptafluoro-4",6"-heptanedione-6"-yl)-chlorosulfo-o-terphenyl(BHHCT)を開発し,これを用いた時間分解蛍光測定で以下のような結果を得た. 1. メタンフェタミン(MA)を測定し1pg/mlまで検出できた.この方法で尿中および毛髪約10cm中のMAを測定できた.また,このラベル剤にEuとSmを別々に結合させた標識物質を用いて,2種類の物質の同時測定を行い,MAと向精神薬(デシプラミン,クロルプロマジン)を1つの試料から同時に定量できた.さらに,癌マーカーのCEAとAFPの同時測定も可能にした. 2. ヒト血清中のIgEと農薬のベンスルフロンメチルを高感度に測定できた. 3. Lewis式血液型を構成する2つの抗原の出現時期やその変化の過程を正確に知るために,臍帯血,新生児血,乳幼児血,成人血の抗原量を測定した.この結果,臍帯血中にしLe(a+b-)の成人とほぼ等しいLewis^a抗原と,少量のLewis^b抗原がすでに存在するのを検出し,これは血漿中に存在すると考えられた.また,Le(a-b+)においては,生後5日から血漿中のLewis^b抗原量が上昇し始め,生後日数を経るほどその抗原量が増え,血球に吸着していくと推測された.本法によるLewis^a抗原の検出感度と抗Lewis抗体の検出感度は従来のELISAより2桁以上高感度であった.これまでは乳児期に血漿中に抗原が出現してからLewis式血液型抗原が変化するとされていたが,本研究の結果からより早い時期に抗原が出現していることが示唆され,親子鑑定などの際に役立つ有用な知見を得た. 4. 新規ラベル剤がイムノアッセイ以外の標識にも使えることを証明するために,DNAハイブリダイゼーションアッセイを行い,4pg/wellのDNAを検出できた. これらの分析結果はいずれも従来法よりも検出感度,簡便性,試料量などにおいてはるかに優れており,いくつかの新しい知見を得られ,法医学的検査に応用できることがわかった.
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