研究概要 |
平成9年度には培養細胞株K562をモデルとして、赤芽球分化、巨核球分化系を確立し、細胞の分化・増殖に対するサイクロスポリンA(CsA)とFK506の影響を検討したが、明らかな作用はみとめられなかった。 平成10年度には正常人骨髄細胞からin vitroで巨核球コロニーを形成させる系(in vitroコロニー形成法)を確立した。同系をもちいた巨核球形成過程に対し、protein kinase Cの阻害剤であるH-7やprotein phosphatase 1, 2A阻害剤okadaic acidは分化抑制作用を持つことを確認し、赤芽球形成過程と比較した。赤芽球形成過程については和文論文出版、英文論文を投稿中であり、また巨核球形成過程につき現在論文執筆中である。 Protein phosphatase 2B(calcineurin)の阻害剤としてもちいたCsA,FK506はすでに報告したように赤芽球分化はともに促進するものの、巨核球分化に対しては明らかな促進作用はみられなかった。また、抑制作用も明らかではなかった。赤芽球分化においてはcalcineurinは重要な役割を果たしていることはすでに明らかになっているが、巨核球分化には関与しないことが示唆されたもしかし、これらの作用には個体差が比較的大きい可能性を示唆する結果も得られており、実験回数を増やして現在再検討中である。また、真性多血症や慢性骨髄性白血病等の骨髄増殖性疾患においては赤芽球、巨核球、顆粒球分化の機序が正常とは異なっていることが報告されており、今後は本研究をさまざまな血液疾患にも応用し検討する予定である。
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