研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)における骨・関節破壊は,主として,IL1,IL6,TNFα等の炎症性サイトカインにより誘導される破骨細胞やタンパク分解酵素の作用によるものと考えられている。しかしながら,これらのサイテカインの濃度は疾患の病型,活動性,経過等と必ずしも相関を示さない。従って病態を明らかにするためには,サイトカイン濃度測定よりむしろ,サイトカイン受容体シグナルの有無を検討する方が有用であろう。そこで本研究では,RA患者およびコントロールとして変形性関節症(OA)患者より関節液を採取し,関節液細胞におけるサイトカイン受容体シグナル伝達分子Statの活性化状態をgel shift assayにより検討し,以下を明らかにした。 1.Stat分子のDNA結合能はRA14例中8例において認められたが,OA10例においてはいずれにも認められなかった。 2.Supershift assayにより,RA患者8例における活性化Stat分子はいずれもStat1であった。 3.Western blottingの結果,Stat1活性化症例,非活性化症例いずれにおいてもStat1タンパク発現量は同程度であった。 4.Stat1活性化は,関節液細胞をあらかじめ中和活性を有する抗IL6抗体存在下で培養することにより消失した。 5.関節液とほぼ同様の細胞組織を有する正常人末梢血白血球をIL6でシゲキすると,RA関節液細胞とは異なりStat1,Stat3共に活性化された。さらに,RA関節液とは異なり,Stat活性化は5分でピークを示した後,分単位で非活性化された。 以上の結果より,RA関節液細胞では,IL6*Stat1経路が作動していること,さらに正常人末梢血白血球と異なり,RA関節液細胞ではIL6*Stat1経路が持続的に活性化されており,サイトカイン刺激に対するunresponsvenessの欠損している病態が示唆された。
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