研究概要 |
我々はカルパイン(カルシウム依存性システインプロテアーゼ)の特異阻害蛋白カルパスタチンに対する自己抗体が慢性関節リウマチ(RA)に検出されることを報告してきた。カルパインは軟骨破壊や炎症惹起に関与する中性プロテアーゼの一種と考えられるため、その阻害蛋白であるカルパスタチンに対する自己抗体の存在はRAの病態に関与する可能性がある。本研究では、1)ヒトカルパスタチンの全長cDNAの分離と、その発現産物を利用した坑カルパスタチン抗体のドメイン反応性、2)患者自己抗体のカルパスタチン活性抑制能、3)モデル動物関節炎におけるカルパイン阻害物質の効果、を検討した。 1)患者血清は疾患によって、カルパスタチンの5つのドメイン(L,I,II,III,IV)に対して様々な反応性を示した。RAではドメインIとIIを高率に反応した。また、RAの81%はいずれか1つ以上のドメインと反応したが、SLEは46%、強皮症は32%、筋炎は43%にとどまっていた。 2)坑カルパスタチン抗体陽性RA患者IgGはドメインI〜IVの精製融合蛋白のカルパイン阻害活性を用量依存的に抑制した。RA患者IgGの11例中5例(45%)はいずれか1つ以上のドメインに対してカルパイン活性を40%以上回復したが、SLE患者および健常人IgGではかかるカルパイン活性の回復は認められなかった。 3)様々なカルパイン阻害薬の中で、カルペプチンにII型コラーゲン誘発ラット関節炎の抑制効果が確認された。組織像でも、カルペプチン投与ラットでは滑膜増殖や骨軟骨破壊の程度が軽度であった。 以上の成績は坑カルパスタチン抗体がRAの新たなマーカーとして有用であり、同抗体がRAの病態形成に関与する可能性を示し、RAの新たな治療法の可能性が示唆された。
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