カテプシンEはペプシノーゲンA、ペプシノーゲンC、カテプシンD、レニンと同じ酸性プロテアーゼの一つで、1)細胞内プロテアーゼである、2)カテプシンDと違い非リソゾームプロテアーゼである、3)胃粘膜皮蓋上皮細胞に最も多く存在する、4)胃以外に脾臓、胸腺、など免疫系組織に存在する、という特徴を持つ。カテプシンEの生理機能は、細胞内プロテアーゼで、胃以外に免疫系組織に主に存在することから、免疫機構、特に抗原形成に関与していると考えられているが、いまだ不明である。一方、カテプシンEの病態との関連において、免疫組織化学的解析で、カテプシンEが膵管細胞癌の100%(15例)に発現していることを認めた。正常膵では免疫組織化学的、酵素学的にも検出されず、膵でのカテプシンEの発現は癌特異的であった。本研究において我々はカテプシンEに対するEnzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)を確立し、膵癌診断への臨床応用を検討するため、膵液中のカテプシンEの定量を行った。膵癌29例、慢性膵炎82例を対象に、内視鏡的逆行性膵管造影時に、セクレチン刺激により膵液を採取し、各種検査における膵癌の診断率を検討した。検査法として、膵液中のカテプシンE(ELISA法による)、CA19-9(radioimmunoassay法による)、CEA(radioimmunoassay法による)、細胞診、K-ras変異(mutant-allele-specific amplification法による)を検討した。膵癌の診断率はカテプシンE63%、K-ras41%、細胞診69%、CA19-9 33%、CEA17%と細胞診とカテプシンEが有用であったが、CA19-9、CEA、K-ras変異は臨床的には無効であった。一方、慢性膵炎ではCTSE 8%、K-ras 17%、細胞診0%、CA19-9 10%、CEA 1%と陽性に認められた。細胞診は偽陽性は無く、癌の診断には有用であった。次に、カテプシンEが有意に膵癌に陽性率が高く、臨床応用も可能と考えられた。カテプシンEと細胞診を組み合わせると膵癌の診断は92%と良好であった。
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