研究概要 |
1. 肝組織内浸潤T細胞のクロナリティの証明とCDR3のアミノ酸配列の決定 自己免疫性肝炎(AIH)患者肝組織よりT細胞レセブター(TCR)Vβ CDR3サイズスペクトラタイピングを行い、ある特定のVβを持ち、単クローン性に増殖していると考えられるT細胞を肝組織中に認めた。クローン性T細胞は複数存在し、また、複数の症例に共通のもの(Vβ2,3,4,16,22)もみられたが、症例ごとに異なるものもみられた。また、多くのT細胞が非クローン性に増殖していた。クローン性T細胞のTCR VβのPCR産物をクローニングし、CDR3のシークエンスを解析した。各患者においては、同一のシークエンスをもつcDNAクローンが多くみられたが、同一のVβにおいても患者ごとにCDR3のシークエンスは異なっており、患者間で全く同一のクローンは認められなかった。以上より、AIHにおいて、ある特定の抗原を認識し増殖するT細胞により肝細胞障害が惹起されるが、患者ごとにそのT細胞クローンは異なり、複数の抗原エピトープの存在が示唆された。 2. アシアログリコプロテインレセプター(ASGPR)抗原に対する末梢血リンパ球の増殖反応 AIH,BおよびC型慢性肝炎(CH-B,CH-C),原発性胆汁性肝硬変(PBC)の末梢血リンパ球をASGPR抗原にて刺激し、その増殖反応をみた。その結果、AIHにてstimulation indexが高値のものが多く、次にCH-Cにても反応するものがみられた。しかし、AIH性期患者においても無反応のものも数例あり、CH-B,PBCでは反応はほとんどなかった。以上より、ASGPRはAIH特異的ではなく、AIHとCH-Cの一部に共通の抗原である可能性がある。ASGPR特異的T細胞クローンの誘導を試みるも長期に渡って特異的に増殖するものは得られず、ペプチドワクチンについては今後の課題となった。
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