研究概要 |
ヒトアシア口糖蛋白受容体(AGPR)をコードするcDNA断片を組み替え蛋白発現ベクタープラスミドにサブクローニングし,大腸菌を用いてヒトAGPRの細胞外領域および細胞内領域の組み替え蛋白を発現した.精製した蛋白を固相化抗原として用い,酵素抗体法により自己免疫性肝炎(AIH)患者血清との反応性を検討した.酵素抗体法による検討では,AGPR全長蛋白と細胞外領域を含む蛋白に対して多数例で反応性が認められ,細胞内領域を含む組み替え蛋白に対する反応性は弱かった.AGPR組み換え蛋白をビオチン化し,免疫沈降法により患者血清中の抗体との反応性を検討した.酵素抗体法で高吸光度を呈したAIH患者血清では,細胞外領域蛋白との良好な免疫沈降反応を認めたが,細胞内領域蛋白との反応は認めなかった.細胞外領域蛋白を用いたウエスタンブロット解析では,ごく少数のAIH患者血清で弱腸性の所見が得られたのみであり,SDS電気泳動等による抗原エピトープの失活に伴う変化が疑われた.AIH患者血清中の抗AGPR抗体の認識する抗原エピトープはウエスタンブロット解析では検出が困難と考えられた.酵素抗体法および免疫沈降法の成績より,AIH患者血清中の抗AGPR抗体に対する主要な抗原エピトープは細胞外領域に存在することが示唆された.AIHの抗AGPR抗体のエピトープが細胞外に存在することより,抗AGPR抗体の病因的意義が推察された.免疫担当細胞や抗体が肝細胞膜上のAGPRを介して肝細胞障害を惹起する可能性が示唆される.AGPR組み換え蛋白を用いたリンパ球刺激を行った結果,AIH患者のリンパ球でAGPR蛋白と反応するものがあり,今後T細胞エピトープを含めてより詳細なAGPRのエピトープ解析を進めていく予定である.
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