研究課題/領域番号 |
09670545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 秀次 大阪大学, 医学部, 講師 (20237423)
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研究分担者 |
黒田 了文 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
小川 弘之 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
伊藤 裕章 大阪大学, 医学部, 助手 (40252639)
KANAZAWA Sumie Osaka University Hospital, Medical Staff
TAKEDA Akira Osaka University Medical School, Assistant Professor (00197295)
金澤 済江 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
竹田 晃 大阪大学, 医学部, 助手
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1997年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / クローン病 / 腸炎モデルマウス |
研究概要 |
実験動物での腸炎モデルとしては、主としてラットにおいてTNBS(2,4,6-trinitrobenezene sulfonic acid)およびDSS(Dextran sodium sulfate)を用いる方法が報告されている。特にTNBS誘発腸炎は人のクローン病モデルになるとされている。今回、クローン病の新しい治療法の開発を目指し、リンパ球、サイトカインの解析が行いやすいマウスの系での慢性腸炎モデルの作製を試みた。しかし、我々のBa1b/cマウスを用いた系ではTNBS誘発腸炎モデルは作りがたいとの結果を報告した。DSS誘発腸炎モデルについて検討し、マウスに5%DSS水を自由に吸水させることにより血便が出現し、体重減少も認められたが、この系では肉芽腫は認められず、クローン病よりはむしろ潰瘍性大腸炎に近い病態を示すと思われ、クローン病のモデルとしてはふさわしくないと判断し、この系での薬物効果を見ることを断念した。最近、クローン病はヘルパーTリンパ球のTh-1細胞優位の病態を、潰瘍性大腸炎はTh-2細胞優位の病態を示すと言われている。そこで、我々はリンパ球移入により生じ,その発症にTh-1細胞の関与が示されているマウスのwasting diseaseの系を検討した。マウス脾臓より磁気ビーズ及びFACSにより集めたCD4^+CD45RB^<high>のTリンパ球をSCIDマウスへ移入した。腹腔内投与後約3-4週目より下痢が出現し、更に体重減少が認められて8週で投与前に比し約10%減少した。病理組織学的にも、腸管粘膜の肥厚、過形成がみられ、炎症性細胞浸潤を伴う炎症所見が認められた。粘膜の脱落は見られず明らかな潰瘍形成は認められなかった。また、このマウスの腸管粘膜内にIL-6,lFN-γの強い発現が認められた。CD4^+CD45RB^<low>T細胞を同時に移入するとこの現象は出現せず、下痢、体重減少は生じず、コントロールと同様に順調に体重は増加した。そこで、このマウス慢性腸炎モデルの系を用い抗マウスIL-6受容体抗体の効果を検討した。CD4^+CD45B^<high>T細胞移入と同時に抗マウスlL-6受容体抗体(1mg/マウス)を腹腔内投与し、以後週に1回投与した。抗マウスlL-6受容体抗体投与により下痢の発症は防止され、また体重減少は認められず、無処置コントロール群、CD4^+CD45RB^<low>T細胞同時移入群と同様に体重は増加した。また、組織学的にも粘膜の過形成、炎症も極く軽度にまで抑制された。抗マウスlL-6受容体抗体投与により、粘膜内のIFN-γの発現も抑制された。イムノグリブリンのコントロールとしてラットIgG投与にて体重減少の出現が少し遅れる傾向がみられたが、下痢、体重減少はIgG無投与群と有意差なく認められ腸炎の発症は抑制されなかった。今後は、腸炎発症後に抗マウスIL-6受容体抗体を投与することにより慢性腸炎を改善させうるか検討し、ヒトのクローン病患者への応用の可能性を追求したい。
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