研究概要 |
コレシストキニン(CCK)は腸管と中枢神経に局在し,膵内外分泌調節,膵臓殖促進作用などを示す消化管ホルモンである。本研究では,CCKがランゲルハンス島に存在することを証明し,その発生学的推移について検討した。成熟Wistarラットの膵を摘出し,CCK-8抗体と既存の内分泌ホルモンに対する抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。CCKの分子型について逆相HPLCを用いて検討した。また,単離したランゲルハンス島を用いてRT-PCRによりCCKmRNAの存在を,その局在をin situ hybridizationで確認した。CCKの発生学的変化を検討するため,胎生13日目から成熟期までの各段階のラットの膵臓を摘出し,免疫組織化学的検討およびin situ hybridizationを行った。成熟ラットではCCK陽性細胞はB細胞に一致してびまん性に存在した。RT-PCR法では陽性コントロールとして用いた十二指腸と同様の位置に単一バンドを認めた。逆相HPLCではCCK-8に一致した部位にピークを認めた。発生学的には胎生15日よりガストリン陽性細胞が出現し,生後2日目にはガストリン細胞は減少し,生後7日目ではほぼ完全に消失した。一方、CCKは生後21日目頃(離乳期)より再び出現し,成熟期まで至った。この時期にはガストリン細胞は消滅し,in situ hybridizationでもCCKmRNAがラ島に認められたことからCCK産生細胞であると考えられた。以上より,ラ島のCCKは胎生期の膵の分化,増殖に関与するのではなく,離乳期以後の膵内外分泌刺激などの生理学的役割に関与する可能性が示唆された。
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