研究概要 |
平成9年〜平成10年度研究業績 (1) 実験装置の作製について・・・本研究の実験装置は今回設備品に申請しているサーマル式ペンオシログラフの購入とともに、organ bathを作製し、測定系を完成させた。この装置をもちいて、課題である低酸素ガス吸入による横隔膜筋への影響に関する実験を実施した。 (2) 横隔膜筋収縮特性、筋線維の変化について・・・FIO_2 10%の低濃度酸素ガスをラットの飼育チャンバーに持続的に流入させ、3日、1、2、3週間後に、横隔膜筋筋小片を作製し収縮特性を評価した。1、2週後に張力-周波数曲線が最も低下し、収縮はslow化し、繰り返し刺激に対して疲労抵抗性に変化した。3週後にはいずれもコントロール値に戻る傾向を示し、低酸素状態での適応反応と思われる反応が見られた。筋線維の変化はATPase染色にて評価した。3日後に単位面積あたりの遅筋線維の速筋線維に対する比率が最も多くなり、遅筋線維優位に変化したが、次第にこの比率はコントロール値に復帰した。 (3) Hemo oxygenase(HO)、NO synthase(NOS)発現の検討・・・HO-1は、第1日目に有為の発現がみとめたが、その後は減少した。HOはスーパーオキサイドに対して防御的な作用を持つ。又iNOSは第1日目に低下したが、その後増加したのに対して、eNOSは全期間にわたって増加していた。 (4) 以上の結果から、低酸素負荷の早期にスーパーオキサイドを防御するHO-1が増加、iNOSは減少し、これらが防御機構として働いていることが判明した。その後継続的なeNOSが見られ適応反応に関与している可能性が推察された。横隔膜筋はその発生張力の減少が呼吸筋不全に関係するが、本研究により、低酸素状態における横隔膜筋収縮力や筋線維の変化の機序として、HO-1,iNOS,eNOS発現とが密接な関係にあることが結論づけられた。
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