研究概要 |
肺癌が産生する血管内皮細胞の増殖因子にはfibroblast growth factor(FGF),vascular endiothelial growth factor(VEGF)などのheparinに親和性を持つものが報告さている.我々は最近各種癌細胞の血管内皮細胞増殖因子の産生を検討したところある肺の扁平上皮癌の培養上清に非常に強い活性を検出した.この増殖活性を生化学的及び分子生物学的に検討したところheparinに親和性はなくそのcDNAの塩基配列はinsulin-like growth factor II(IGF-II)のそれと一致していた. 肺癌がIGF-IIをしていることは以前より報告されており,腫瘍が産生するIGF-IIは腫瘍細胞自身の増殖を促進していると考えられていた.しかるに我々の今回の結果は肺癌の産生する血管内皮増殖因子としてFGFやVEGF以外にIGF-IIが重要であることを示唆している. その他腫瘍細胞の培養上清中の血管内皮細胞にたいする増殖促進活性の検討の結果を以下に示す. 1) 白血病細胞 K-562,ML-1,U-937,THP-1,HL-60の培養上清中の活性を測定したところHL-60及びK-562細胞の培養上清中に血管内皮細胞にたいする増殖促進活性が認められた. 2) 癌細胞 肺癌(腺癌3例,扁平上皮癌2例,大細胞癌2例,小細胞癌4例), 膵臓癌1例,膀胱癌1例,口腔癌1例,甲状腺癌1例,副腎腫瘍1例の培養上清中の活性を測定したところ肺小細胞癌4例と膀胱癌,口腔癌の培養上清中に血管内皮細胞にたいする増殖促進活性が認められた. 3) 血管内皮細胞増殖因子の同定 肺扁平上皮癌の一例(T3M-11)以外の腫瘍が産生する血管内皮細胞増殖因子はfibroblast growth factor(FGF),vascular endiothelial growth factor(VEGF)などのheparinに親和性を持つ増殖因子であった
|