研究概要 |
Tリンパ球は抗原特異的免疫応答を司り,気管支喘息の基本病態であるアレルギー性炎症を誘導する.そこで,抗原特異的免疫反応の記憶維持機構に対するTリンパ球テロメラーゼの関与を明らかにするため,ハウスダスト感作アトピー型喘息患者末梢血単核球をハウスダスト抗原刺激にて一週間培養し,TRAPアッセイによりテロメラーゼ活性を半定量的に評価した.ハウスダスト感作喘息患者Tリンパ球に活性の増強を認めたが,健常人および非感作喘息患者には有意な増強が認められなかった.さらに、その増強が著しい喘息患者は全例小児期にアトピー歴を有しており,抗原感作メモリーTリンパ球が長期にdcnel expansionを繰り返してきたと考えられる症例は,そのテロメラーゼ活性増強能が高いことが予想された。 以上のことから,リンパ球におけるテロメラーゼ活性の抑制は,アトピー歴を絶ち切る新たな戦略となることも期待される。そこで,テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の一部のアンチセンスPeptide nucleic acids(PNA)を作成し、E-B virusで不死化した株化Bリンパ球の細胞膜を処理した後に加え、1〜7日間培養した後テロメラーゼ活性を測定した.しかし,PNA添加にによる有意なテロメラーゼ活性の変化は認められなかった。これはPNAがBリンパ球に十分取り込まれなかったためと考えられ移入効率の向上の必要性が考えられた。 そこで、サイトメガロウイルスのプロモーターによってテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子のアンチセンスを発現するアデノウイルスペクターを構築し癌細胞株に感染させ、7日間培養して生細胞率、テロメラーゼ活性を測定した。一部の癌細胞において生細胞率の低下を認めたがテロメラーゼ活性は変化を認めず,組み換えアデノウイルスの構造上の問題によるものと考えられ,構造の改善が今後の課題として残された。
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