研究概要 |
肺線維症には、不可逆的線維化を示し予後不良な特発性間質性肺炎と、可逆的線維化を示す予後良好なものがある。そこで可逆的線維化を来すブレオマイシンー回投与による肺線維症モデルをウサギに作成し、細胞外基質の代謝に重要なマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の関与を検討した。プレオマイシン投与後早期に肺胞腔内線維化が形成され、その後,線維化巣は肺胞壁に癒合したり肺胞腔を閉塞し、気道・肺胞上皮細胞の再生により被われた。さらに時間が経つと、線維化巣は縮少傾向を示し、上皮細胞の再生に伴い肺胞の再構築所見が観察された。免疫組織化学による観察では,MMP-1,-2,-9、そのインヒビター(TIMP)-2を再生上皮細胞に認めた。さらに、生体内で唯一のMMP-2の活性化因子であることが知られている膜型(MT-1)のMMPは、線維化巣の気道・肺胞上皮由来の再生上皮に限局して陽性であった。肺組織のgelatin zymographyによる観察では,コントロールに比較して、後期にMMP-2の優位な増加、およびMMP-2の活性型/不活型の比率の優位な増加を認めた。また、気管支肺胞洗浄液(BALF)の液体成分のgelatin zymographyによる解析でも、同様にMMP-2の優位な増加、およびMMP-2の活性型/不活型の比率の優位な増加を認めた。この、MMP-2の活性化に、局所で増生、再生した上皮細胞由来のMT-1MMPが関与することが示唆された。MMP-2の活性型/不活型の比率の優位な増加は、肺組織の修復、すなわち上皮細胞による線維化巣の封じ込めの過程に働き生体に有利な状況を示すものと考えられた。また、BALFでも組織と同様のgelatin zymographyの結果が得られたことは、将来臨床への応用の可能性を示唆するものと考えられた。
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