研究概要 |
背景と目的:我々は平成7年度〜平成8年度の基盤研究Cにおいてヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)は種々のサイトカインやLPSによりPGI_2を産生し,HPASMCのPGI_2産生はIL-6で抑制されることを明らかにした.本研究においてはNOがHPASMCのPGI_2産生を促進するか否か,またIL-6はHPASMCのNO産生を抑制するか否かを検討した. 方法:(1)HPASMCをsodium nitroprusside(SNP)やLNMMA,methylene blue(McB)で24時間培養し,培養液中の6-keto-PGF1αをRIAで測定した.またLPSやIL-1βも同時に加えた場合も同様に測定した.(2)HPASMCをIL-6を含む培養液で24時間培養し,培養液に放出されたNOを化学発光法により測定した.またLPSやIL-1βにIL-6を同時に加え培養した時のNOを同様に測定した. 結果と考察:(1)SNPはHPASMCのPGI_2産生を促進し,LNMMAやMeBは抑制した.LPSやIL-1βによるHPASMCのPGI_2産生促進効果はSNPにより更に促進し,LNMMAやMeBにより抑制された.(2)HPASMCをIL-6単独で培養した場合はNO産生に変化は無かったが,IL-6にIL-1βやLPSを加えて培養すると,IL-1βやLPSによるNO産生促進効果が有意に抑制された.以上の結果より,ヒト肺動脈平滑筋細胞から産生されるNOとプロスタグランディン(PGs)にはクロストークが存在すること(NOがPGI_2産生を促進),またIL-6はヒト肺動脈平滑筋細胞のNO産生を抑制することが明らかとなった.IL-6はNOやPGsの産生を抑制し抗炎症性サイトカインとしての一面を有している可能性がある.今後NOとPGsの関連についてそれらの反応に関わるCOXやNOSの発現についても検討する必要がある.
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